会員の活動紹介ー長野県『恩がえしIILA』

一般社団法人「恩がえしIILA」の活動報告①「設立の動機と現状」

  私たちは長野県飯田市周辺の生きものの暮らしをよくすること、生きものを大切にする人を増やすことを目的として活動しています。

 弊法人の設立理事である私ともう1人は、ある動物園の飼育員を長年務めていました。私は、小学校の授業で飼育されていた有色のニワトリの写生を行ったとき、そのニワトリの黒や茶色などなんとも言えない綺麗さやトサカの質感、そのニワトリの「生きている」という、どこかしら威圧的にも感じるオーラのようなものが忘れられません。
 また、もう1人の理事は、小学校で飼育委員となったとき、その当時の先生が、動物の嗜好性についての研究や発表を行ったり、飼育小屋で飼育されている動物と生徒がふれあえる場所として「放飼場」を造ったり、その動物の飼育以上のことを学ばせてくださり、放飼場に離されたウサギやニワトリが自由に走り、今までみたことのない動きを見せた時の感動を今でも思い出せると言います。 
 人、特に子どもは、生きものが身近にいることで、生きものとの関わり方を知ることができたり、様々な感情や感覚を引き出されたりして、子どもの成長に生きものは重要な役割を担っていると思われます。 

しかし、現在の教育現場では「動物を飼ったことがない」「動物が苦手」といった先生方が多く、また衛生面やアレルギーの関係で、学校などにおける動物の飼育数が減っているということをよく耳にします。実際に弊法人が事業開始前に取った市内教育現場へのアンケートでも、一部の施設が飼育しているだけで、それ以外の施設、特に幼稚園・保育園では動物を飼育していないことがわかりました。

そんな状況の中、動物園には、学校飼育動物の飼育方法についての相談が来ます。また、新たに学校内での動物飼育を検討されている先生からの動物に関する質問などもあります。

 最近では減りましたが、動物(ウサギ)の増えすぎやクラス替えなどで動物を飼えなくなったため「動物園で引き取ってくれないか」という問い合わせもよくありました。このような場合、動物園は、学校飼育動物やペットなどの終生飼養をお願いする立場であるため、このような依頼にはなかなかお答えできないことが多いのが実情です。

 そのようなことも関係しているのか、最近ではヤギを”レンタル”することによって、学校での動物飼育を始めるところがあります。ただこれにも問題があるように思われます。それは、ヤギがどのような動物なのかしっかりと把握しないで飼育開始してしまい、生徒ならびにヤギのケガなどを伴う事故が発生する可能性があることと、「飼えなくなったら人に引き渡せばよい」という動物飼育に関する意識付けを生徒に植え付けてしまう可能性があることが考えられます。

 現在、現在の動物園・水族館などでは「動物の福祉」を重要視し、積極的に環境エンリッチメントが導入されたり、施設や飼育方法・ふれあいの方法を変更したりと、動物側の生活環境の改善も行われています。

 そこで、弊法人では、私たちの長年動物の飼育に携わってきた経験や知識を活かして、教育現場における動物の飼育環境の改善と終生飼養を広め、よりよい動物・人・教育現場の関係性のお手伝いをするべく、「学校飼育動物の飼育補助事業」として活動しています。
  一般社団法人「恩がえしIILA」代表理事・前  裕治

恩がえしIILAの活動報告②

一般社団法人 恩がえしIILAの活動報告②「事業内容と課題」

  弊法人の事業内容の1つは、先生方の休日や出張などでお忙しい日に、学校飼育動物の飼育施設の清掃やエサやりなどの作業をお任せいただくというものです。

 動物を飼い始めるからには、その場所の関係者が分担しあい、責任を持って飼育していくことが理想です。そういったことを生徒たちに伝えるためにも、教育現場での動物飼育は、必ず必要だと思います。普通、学校飼育動物の飼育管理は、担当の先生方や飼育委員または順番で決められた生徒などが主体となって行われているのがほとんどかと思います。

そして土日祝日・長期休暇中などには、生徒を含む学校関係者が必ず来校し、飼育作業を行う必要があります。しかし、これは時間的にも作業的にも負担を伴うものと考えられます。それにより、作業が煩雑になり、動物側の健康面にも悪影響が出てしまうという可能性もあると思われます。

 そこで弊法人は、学校側が動物を飼育する主体であることを大事にしつつ、先生方ならびに担当の生徒たちの負担を軽減し、また動物がより落ち着いて過ごせるように、作業を補助する活動をしています。

 現在、弊法人に月8日ほど現在飼育補助作業をお任せいただいている認定こども園では、ヤギ・ウサギ・オカメインコ・ミドリガメが飼育されており、弊法人が活動を始めるまでは、お一人の先生が土日祝日も出勤し、また出張などがある場合には、早朝に作業をしてから移動するといった状態であったと聞きました。

 このように、生徒・園児の情操教育のために、動物を飼育し、ご尽力されている施設への基本的な作業面での補助を今後とも続けていきたいと思います。

 「学校飼育動物の飼育補助事業」のもう1つの事業内容は、新たに動物の飼育を開始したい、もしくは現在飼育中の動物が暮らす環境を改善したいというときの、飼育方法や施設の改善などの相談を受け付け、必要であれば施設改修などのお手伝いをするというものです。動物を飼いやすい飼育方法を提案したり、飼育施設の構造を提案し、必要であればその改善ならびに設置作業の補助を行ったりしたいと思っています。ある意味「楽な」動物の飼育方法は、関わる人が動物を嫌いになる要因を減らすことになり、逆に動物に対する愛着を増やし、それが動物をじっくり観察するということにつながり、動物側にとってもより豊かに健康的に生活できるようになると思われます。

 このように「学校飼育動物の飼育補助事業」は2つの主軸にて活動できる体制をとっていますが、実際のところ、有料での受託となっているためか、広がっていないのが現状です。また、飯田市内の教育現場では動物飼育に対する抵抗感があり、動物飼育数が増えないことも、活動の広がりを止める要因の一つと考えられます。

 しかし、上記の認定こども園での作業時や動物園時代の子どもの来園者の様子を思い出すと、動物が近くにいるときの子どもたちの笑顔や反応から、動物は子どもたちをリラックスさせ、心の成長を促す存在であることがわかります。

 幸いなことに、飯田市には保育士資格を取得できる短期大学があり、未来の保育士が近くにいらっしゃる環境にあります。今後は、現在の活動を継続しつつ、市内の教員や保育士の方々に、動物の魅力や「楽な」飼育方法をお伝えできるような企画を実施し、飯田市内の教育現場に、動物と子供たちがよりよい関係性で過ごす、素敵な環境を増やせるように努力していきたいと考えています。

 一般社団法人「恩がえしIILA」 代表理事・前 裕治