中島由佳先生の発表内容

小学校における鳥インフルエンザ後の動物飼育状況―全国調査

  大手前大学  中 島 由 佳 

 鳥インフルエンザ流行の影響はあったのか?  本調査の結果、鳥インフルエンザの発生(2004年)以降、動物を飼育する小学校の割合は 減少してきており、また飼育の軸が鳥類・哺乳類からメダカや両生類、昆虫などの「非鳥類・ 哺乳類」に移りつつあることが明らかとなった。特にメダカの割合の伸びは著しく、学校飼育動物の主流がメダカとなりつつあることがうかがえる。一方で、鳥類・哺乳類の比率の低下、 特に鳥類(ニワトリや小鳥等)の飼育の比率が著しく低下したことは、鳥インフルエンザへの感染を恐れて鳥類を飼育しなくなったことが、要因の一つと考えられる。  児童が鳥類・哺乳類と触れ合う機会が減ってきているであろうことは、飼育委員会の割合が減ってきていること、長期休暇の飼育体制が「児童が当番で世話(鳩貝、2004)」から「教 職員が当番で世話(2017-2018 年)」に移ってきていることからもうかがえる。  明治期から続いてきた、児童の情操を養い理科等の教材に役立てるための学校での鳥類・哺乳類飼育は、もはや教材として扱われず、飼育委員等の一部の児童しか触れ合うことがなく、 その世話の負担のかなりの部分を教職員が担っていることを今回の調査は明らかにした。そして、それは決して数十年間での漸減的な経緯ではない。鳥インフルエンザ流行が鳥類・哺乳類 飼育の減少の少なからぬ要因であることは、今の大学生たちが小学生だった頃の学校動物飼育の状況と 2017-2018 年現在の状況との比較が、如実に示している。  教職員のみに負担を強いるのでなく、安心・安全を担保しつつ、温かさを感じられて直接に触れられる鳥類・哺乳類の学校飼育を支える方策、環境を模索すべきと考える。