★保谷第二小学校の飼育活動が文科省の取組事例に★

東京都西東京市立保谷第二小学校の「学校動物の飼育活動を通じた開かれた学校づくり」が、文部科学省が推進している「地域学校協働活動」の事例として取り上げられました。

文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」

https://manabi-mirai.mext.go.jp/index.html

全国の取組事例「新型コロナウイルス感染症対応下における取組事例について」

https://manabi-mirai.mext.go.jp/upload/koronajirei-isshiki.pdf

本ホームページでは昨年6月にご紹介いたしました。詳しい内容について左側メニューの「学校の飼育活動」→「西東京市立保谷第二小学校」をご覧ください。

お知らせ

西東京市立保谷第二小学校の取組

                                              西東京市立保谷第二小学校

                                                  校長  神山 繁
 飼育活動は長年にわたる本校の特色の一つである。学校教育における一つの完成モデルとして取組を報告する。 
教育的意義;本校での位置付け

 飼育活動は,学習指導要領に明記している生活科・理科を始め,体育,特別の教科 道徳,総合的な学習の時間等に関連する教育活動である。  

 ①高学年を控えた4年生に学校全体のための当番活動を経験させること。
 本校では, 1年間飼育活動担当学年として4年生を位置付けている。10歳という成長段階における命の学習に対する理解が,飼育活動が「お世話」から「命を預かるという敬虔な仕事」へと移行することを期待している。また,6年生になったら学校の顔としてリーダーになるという自覚を持つことと同様に,児童にとって「4年生になったら~をする」ことが決まっていることによる教育的成果があると考えている。先輩が取り組んできた活動を引き継ぐ際に,仕事に対する責任,そして,命に対する責任を理解する。全校児童で育てている動物の世話を任されるという自負と何かあっては申し訳ないという責任感をもって取り組みながら動物の命に対する愛情と畏敬の念が生まれる。年度末に新4年生になる3年生に引き継ぐ際の達成感と皆のために貢献できたという満足感等を育成することが重要な教育的目標である。
②自分自身の命を見つめる場を設定し人権教育の充実を図ること。
 1年間の活動を通して,動物の体調管理や餌の調節,小屋の衛生管理に努め,卵との出会い,時に死と向き合う等,命と直結した場面は児童にとって重要な体験学習となる。役目を終えた児童は,「大変だ。楽しい。嬉しい。悲しい。」という感想だけで終わるのではなく,自分自身の命を振り返る基盤を培うことができている。このことが高学年からの人権教育の学習が児童にとって自分事として捉えることができる要因の1つと考えている。

 児童の活動の様子

 何よりも本校児童ははやく4年生になりたいと思っている。動物が苦手な児童も4年生になったら当番活動を張り切っている。1年後にはどの児童も自信をもって新4年生になる3年生に引継ぎの説明ができるようになっている。 

 《当番活動》

 毎日,昼の時間を使って世話をしている。休日は,保護者とともに来校して世話をしている。

  
《体温が伝える優しさ》
 児童は,動物と触れ合うことで心臓の動きを感じ取り,体温の温かさを通して「命」を実感する。
  

 《命に責を持つ厳しさ》
 児童がいい加減な世話で動物の死を迎えたことはない。が,大事に世話をしていた動物が目の前で死んでいるという事実に児童のショックは大きい。児童は「自分たちがもう少し注意していればよかった。」「何か悪いことをしてしまったのではないか。申し訳ない。」と自責の念を強く持つのである。

   《獣医の先生による指導》

 年間を通して,獣医の先生による授業を行っている。児童にとって飼育活動は当番活動,仕事という意識だけではなく,命の学びとして捉えられていく。 

 

 《引き継ぐもの; 4年生から3年生(新4年生)へ引継ぎ集会》
 年度末に引継ぎ集会を開催する。4年生は自信をもって語り「命のバトン」を渡す。3年生は,世話の仕方を引き継ぐだけではなく, 1年間通して自分たちの役割を全うすること,動物の命に責を持つ覚悟をもつ学習の場である。

  

 担当学年・担任の仕事

 学校として,4年担任が飼育活動を担うことが校務分掌として根付いていて,保護者と連携を取りながら児童の飼育活動を指導している。4年保護者は,児童が4年生になったら休日当番があることを理解し,年末年始のも児童とともに活動を支援している。

《担任の仕事》

 休日の飼育当番を割り振るために保護者に日程調査アンケートを取っている。

  

保護者の理解 
 親子ふれあい教室を開催し,飼育活動の教育的意義や実際に動物と触れる学びを通して,休日の飼育活動に対する保護者の理解と協力を得ている。親子で体験する大人の学びは深く,児童の学習意欲が喚起されている。

 
緊急事態時の取組 
 新型コロナウイルス感染防止のために臨時休業している期間。平日は教員の当番活動,土日を始め休日はおやじ  の会を中心とした保護者・地域の方が当番割り振りから実際の活動を行っている。大人の心にも「命の学び」がしっかりと根付いているからこその活動であり,児童にとって最良のお手本となっている。
このことは今回のことだけではなく,災害時に学校が避難所となった

場合でも飼育活動が継続することを意味している。
《平日;教員による飼育活動》 
 臨時休業期間中は,教員の飼育当番を決めて世話をするために,
全員で飼育活動研修を行った。教員にとっても児童同様に教育的
成果
を期待できている。
《休日;おやじの会を中心とした保護者・地域の方による飼育活動》 
 臨時休業中には子供による休日の飼育活動ができないので,おやじの会が中心となり当番活動の割り振りを行い,保護者・地域の方による飼育活動を進めることができている。
  

まとめ;飼育活動がつなぐこと  

 以上,飼育活動の意義は誰もが認めていることである。臨時休業中に大人による飼育活動を行っているが,4年生児童から「私たちがやりたい。」という強い声が届いている。また,卒業生が手伝いの手を挙げてきている。そのような心を育て続けている本校の飼育活動である。

さて,教員の働き方改革が叫ばれている中,休日の世話ができないために動物の飼育をやめる学校が増えていると聞く。また,飼育活動の意義を十分理解し教育課程に位置付けたいが,休日の活動を行うことができずに取り組むことができない学校もあると聞く。

本校は,保護者の理解のもとに児童による休日当番活動が平日同様に行われ,緊急事態の時にはおやじの会を中心とした保護者・地域の方の協力を得ることができている。実は,このことが,今後の学校における飼育活動にとって重要なポイントであると考えている。

 本校は次のような学校・保護者・地域三者が連携した教育活動が充実し,児童の健全育成が行われている。
  ・PTA,地域による学校サポート体制が確立し,開かれた教育課程の具現化を推進している。
  ・PTA,地域による行動力が結集し,地域の安全環境,災害対策が強化している。
  ・PTA,地域による地域行事が充実し,地域の中で児童が活躍している。  
 学校・家庭・地域三者が連携した教育活動を充実していこうという共同意識と協働意欲が高まっている要因として,三者がともにかかわる飼育活動の位置付けが重要であると考えている。